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森田圭介

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ウイルスに勝利したアリとキリギリスとバッタの話

 

 

 

昔々あるところに、アリとキリギリスとバッタ達が住んでいる国がありました。
 
ご察しの通りアリはとても働き者で、キリギリスは遊び回っています。
 
 
しかし、イソップさんとこのアレとちょっと違うのは、この国にはアリとキリギリス以外にバッタが住んでいました。
 
バッタはアリほど働き者ではありませんが、キリギリスほどは遊びません。
 
 
 
例えば小学生の時。
 
アリは学校が終わり帰宅するとすぐに宿題を済ませ、晩ご飯が終ると宿題以外の勉強を何時間もやります。
 
バッタは門限までは遊んでいますが、その後はキチンと宿題をやり、晩ご飯が終わったらテレビを観たりゲームをしたりして過ごします。
 
キリギリスはアレです。
 
そもそも門限とかいう文化はありませんので好き放題に遊んで、宿題なんかはもちろんやらずに翌朝学校で、『宿題やったけど家に忘れましたー!』といったアホみたいな言い訳をします。
 
 
 
 
アリとキリギリスとバッタは、それぞれ一事が万事この調子なので、大人になるまでに色々な面で相当な差が出てきます。
 
アリはたゆまぬ努力の末に一流とされる大学に通い、一流とされる企業に就職したり、医者になったり、政治家になったりします。
 
バッタはそこそこの努力の末、そこそこの会社に入ったりします。
 
キリギリスは進学とか就職とかは、なんかちょっとよく分からんので、都会の夜の街とかで働いたり、何となくバイトをしたりします。
 
 
 
そのため大人になってからも様々な面で、みるみると差がついてゆきます。
 
更に大人になって子を産んだ虫達は。
 
当然ながらアリの子にはアリが教育を授け、キリギリスの子にはキリギリスの親が教育を授けるので、代を重ねるごとにどんどんと差が開いていきます。
 
 
物凄ぇ開いていきます。
 
 
しかしこの国の虫達は、いくら生活水準などに差があってもお互いあまり気にせず、最近までは結構仲良く暮らしていました。
 
 
 
 
この国は、昔々のほんの少し昔。
 
世界を相手に愚かな戦いを挑みました。
 
〝愚かな戦い〟とは、別に『善』とか『悪』とかそういう話ではありません。
 
そういうものはどちら側から見るかで変わるものなので、そういう話ではありません。
 
ここでいう〝愚か〟とは。
 
 
『全然全く完璧に勝てへんやーん』という意味です。
 
 
この国の虫達は、何故だかはさっぱりわかりませんが。
 
『頑張ればオオクワガタやらカマキリにも勝てる!』
 
という正体不明の自信の元に、『オオクワガタ連合をボコボコにしてやろうぜ!』と意気揚々と戦いに乗り出しましたが、逆にボッコボコにされました。
 
 
ちょっとひく位ボコボコにされました。
 
 
国の主要な領土はほとんどが焼け野原となり、食べるものや着る服ですらほとんどままならなくなりました。
 
なので。
 
何も無いところに立派な国を作るため、みんなめちゃくちゃ忙しくなりました。
 
みんな忙しいと喧嘩はしません。
 
他のヤツに構っている暇は無いので、全然喧嘩はしません。
 
なのでめちゃくちゃ忙しいこの国の虫達は、貧乏でも金持ちでもみんな結構仲良く暮らしていました。
 
 
 
 
しかし時は進み。
 
この国はとても豊かな国になりました。
 
ボコボコにされたオオクワガタ連合のボスであるオオクワガタ国には流石に負けますが、それ以外の国にはほとんど負けない、とんでもなく豊かな国になりました。
 
 
こうなると、みんなそんなに忙しくなくなります。
 
 
生きるために必要な最低限の食べ物はほとんどみんな手に入るし、住む家も着る服も最低限であればみんな手に入る様になりました。
 
あくまでも最低限であればですが、ほとんどみんなが手に入れる事が出来る様になりました。
 
 
するとだんだんみんなが、他の虫の事が気になり始めました。
 
 
キリギリスは『ちょっとアリとかバッタずるくね?なんかいっぱいお金貰ってね?』とか思い始めました。
 
しかしキリギリスは『まっ、いっか』と、思いました。
 
ちょっとモヤモヤしましたが、気のせいかと思いました。
 
 
バッタも同じ様にモヤモヤしていましたが、キリギリスと比べると忙しいので、気のせいだと思う事にしました。
 
 
アリはめちゃくちゃ忙しいので、キリギリスやバッタがモヤモヤしている事を知っていましたが『知らんがな!』と、思っていました。
 
 
みんながみんな、何か心の中がザワザワしていましたが、なんとなくふわっと過ごしました。
 
 
『なんかちょっとヤバくね?』
 
 
と、みんなが感じていたのですが、何がヤバいのか具体的な事は誰にもわかりません。
 
キリギリスの子がアリに拾われてアリと一緒に仕事をしたり、アリの子がキリギリスと遊ぶ事もあります。
 
 
しかし前ほどみんなが仲良くはありません。
 
 
みんながモヤモヤして、ちょっとピリピリしています。
 
なんかヤバそうです。
 
が、ヤバいヤバいと言いつつも、何がヤバいかはやっぱり分からないので、やっぱりみんなが何となくふわっと過ごしていました。
 
 
 
 
〝その時〟までは。
 
 
 
 
〝その時〟は突然やって来ました。
 
なんとなくみんながピリピリしていた時、この国に突如として未知のウィルスが蔓延しだしたのです。
 
虫から虫へ感染すると言われているこのウィルスは、全く持って意味がわかりません。
 
どこから来たのかもはっきりとは分かりませんし、ウィルスに感染した時の対処法も誰にも分かりません。
 
文字通り〝未知〟のウイルスです。
 
 
 
 
感染すると最悪の場合死に至るこのウィルスは、この国の虫達をパニックに陥れました。
 
もしかしたら今までに流行したウイルスの方が強力なのかも知れませんが、現実問題として虫達が何百匹も死んでゆくこのウィルスは、〝未知〟な分、過去のどのウィルスよりも虫達には脅威でした。
 
誰しも『分からない』という事は、何にもまして恐ろしい事なのです。
 
 
虫達は怯えました。
 
 
しかも虫達は〝どうやらこのウィルスは虫から虫へ感染する〟という事は突き止めたので、虫同士の接触を出来るだけ減らしました。
 
みんなが自分の巣にこもり、備蓄の食料だけで過ごしました。
 
 
みんな凄ぇ大変です。
 
 
いつまで続くか分からない非日常の生活。
 
徐々に減ってゆく備蓄の食料。
 
日に日に増えていく感染者。
 
 
パニック。
 
物凄ぇパニックです。
 
 
すると。
 
パニック状態の上、巣ごもりを余儀なくされた虫達はある日を境に対立を始めました。
 
対立のきっかけは、一部のアリ達が考えた〝キリギリス救済措置〟でした。
 
この措置は、食料の備蓄があまり無いキリギリスを対象に税金を使ってみんなで助けようというものです。
 
今にも食料の尽きそうなキリギリス達は大変喜びました。
 
 
しかし。
 
 
バッタ達は物凄ぇ怒り始めました。
 
いやいやちょっと待て!
何でキリギリスだけ助けるの!?
俺達だって大変なのになんでキリギリスだけ!?
 
と、激おこです。
 
 
 
すると、一部のアリ達は言いました。
 
いや、言いたい事は分かるけど、国の食料もそんなに沢山は無いから、とりあえず備蓄がヤバいキリギリス達を助けよ?
 
と、言いました。
 
 
 
それを聞きバッタ達は更に怒りました。
 
キリギリスは普段あんまり働いてないから備蓄が足りないんだろ!?
普段一生懸命働いている俺達を助けないのにキリギリス達だけ助けるってズルいやん!
 
と、プンプン丸です。
 
 
 
更にバッタ達は。
 
て言うかさ。
アリ達は普段いっぱい稼いで蓄えているんだから、こんな時位給料減らしたら!?
アリの税金も上げて私達に配ってよ!
 
と、バッタはキリギリスにもアリにも怒りました。
 
 
 
するとアリ達は。
 
いやいやいやいや。
俺達の食料は俺達が努力して稼いだものなのに、なんで減らさなあかんの!?
バッタもキリギリスも同じで、俺達より努力しなかったから食料少ない訳やろ!?
俺達の分減らして渡すのはおかしいやん!?
 
と、いう顔をしました。
 
そうは言いませんでしたが、そういう顔をしました。
 
 
 
キリギリスは。
 
とりあえずヤバいから、出来るだけ早く助けてくれ!
で、アリは給料減らせ!
 
と、言っています。
 
 
 
 
アリはバッタとキリギリスに、バッタはキリギリスに。
 
努力が足りない!
食料が足りないのは自己責任だ!
 
と、思い。
 
キリギリスはバッタとアリに、バッタはアリにそれぞれ。
 
俺はキリギリス(バッタ)だからアリみたいに努力出来ないの!
好きでキリギリス(バッタ)に生まれ訳じゃないの!
 
と、思いました。
 
 
 
みんながみんな、テメェはしんどくて周りは楽をしていると思いました。
 
 
 
対立です。
 
超対立です。
 
これは実は、この国にウィルスが蔓延する前にみんなが感じていたモヤモヤの正体だったのですが、みんなが普段より苦しい生活を強いられ、イライラが頂点に達したので一気に表面化したのでした。
 
 
 
虫達の敵はウィルスのはずなのに、みんなが好き放題に喧嘩し始めました。
 
 
 
もう、滅茶苦茶です。
 
みんなが自分以外を攻撃して、もう国は滅茶苦茶です。
 
このままでは、国が滅びてしまいます。
 
 
 
 
しかし。
 
そんな、国全体が滅茶苦茶なった時。
 
喧嘩ばかりしている虫達が一致団結する大事件が起こりました。
 
とてもとても悲しい大事件でした。
 
 
なんと。
 
 
〝アイーンキリギリス〟と〝はなまるバッタ〟がウィルスに感染して死んでしまったのです。
 
 
アイーンキリギリスとは、この国の虫達を長年笑わせてきたコメディアンです。
 
彼はキリギリスでしたが、とあるアリに出会った事により、アリの様に働きました。
 
彼がテレビに出るとアリもバッタもキリギリスもみんなが笑い出す、この国を代表するコメディアンです。
 
 
 
そしてはなまるバッタは、いつも優しくて明るいタレントです。
 
家庭ではバクと仲良く暮らし、テレビの中ではいつも笑顔を振りまいていました。
 
彼女がテレビに出るとこの国の虫達は、何となく優しい気持ちになれるのです。
 
 
笑いと優しさ。
 
 
この国は未知のウィルスのせいで、二つの大きなものを失ったのです。
 
 
 
 
虫達は泣きました。
 
とてもとても泣きました。
 
そして泣き明かした後、一匹一匹が考えました。
 
 
このままで良いはずがない。
 
 
と。
 
 
俺達は喧嘩してる場合じゃない。
 
 
と。
 
 
今更アイーンキリギリスもはなまるバッタも返ってはこないけれど、少なくとも喧嘩なんかしている暇なんてなく、一致団結してウィルスと戦わなけれならない。
 
と、思いました。
 
 
 
 
まず、アリが謝りました。
 
ごめんな、バッタとキリギリス。
俺、バッタとかキリギリスが努力せずにサボってると思ってた。
でも違うねんな。
バッタはバッタ、キリギリスはキリギリスの限界まで一生懸命頑張って生きているんやな。
気づかずにごめん。
これからは俺、バッタやキリギリスのサポートもするし、自分自身の事も頑張るし一緒に力合わせて行こうな。
 
と、謝りました。
 
 
 
すると。
 
バッタとキリギリスはアリに謝りました。
 
いや、こちらこそごめん。
この前は、給料減らせとか言って本当ごめん。
よく考えたらアリの給料が高かったり、安定しているのはアリの努力の結果よな。
結果だけみて、ズルい!とか言ってごめんな。
俺達も頑張る!
 
と、謝りました。
 
 
 
そしてバッタは続けて、キリギリスにも謝りました。
 
この前はついカッとして、サボってるとか言ってごめん。
よく考えたら、俺もキリギリスに生まれてたらサボってるかも知れないもんな。
キリギリスの気持ちも考えずに本当ごめん。
一緒に頑張ろうな。
 
と、謝りました。
 
 
 
みんながみんな、謝り合いました。
 
そして、許し合いました。
 
 
 
その結果。
 
助け合った虫達は、なんとかウィルスの感染を大幅に減らす事に成功しました。
 
ウィルスの脅威は完全に無くなった訳ではありませんが、前より怖い気持ちは無くなりました。
 
何故なら。
 
少なくとも、怖いものはウィルスだけになったからです。
 
そう。
 
他の虫から攻められる心配が無くなったからです。
 
良かった良かった。
 
 
 
 
その後この国の虫達は、ウィルス対策だけに留まらず、様々な面で一致団結するようになりました。
 
相手の苦労を汲み取り、みんなで助け合いながら生きていく様になりました。
 
すると。
 
この国はどんどんと豊かになり、アリもバッタもキリギリスも仲良く楽しく生きていける社会となりました。
 
この国の虫達はいつまでもいつまでも、幸せに暮らしましたとさ。
 
 
めでたしめでたし。
 
 
そんな、イソップには負けられない話。