ここで会ったが木曜日

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森猛 伊亮

森猛 伊亮
中学校卒業後、不動産屋や大工、果ては証券屋やボーイなど様々な経験をつみながら、デンジャラスかつクレイジーな生活を経て、2013年より独立。

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良いものが売れない理由の話

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浮かれている。

 

物凄ぇ浮かれている。

 

青い空を青いと感じ、美しい花を美しいと感じながら、気づけば小躍りをしており、愛犬おもち君にいぶかしげな目で見られる程浮かれている。

 

『日本で浮かれている人週間ランキング』なるものが存在すれば、今週の私は蒼井優をゲットした眼鏡の人の次位にランキングされるはずである。

 

決して、親知らずの痛みから解放されたからでは無い。

 

そんなものは随分前に良くなっている。

 

では、何ゆえおもち君から、見て見ぬフリをされる位浮かれているかというと、なんと、当サイト『ここで会ったが木曜日』先週の記事『非日常のススメの話』がスマートニュースに掲載された。

 

快挙である。

 

嬉しい。

物凄く嬉しい。

 

何故そんなに喜んでいるのか、ほとんどの方が意味不明だと思うので、浮かれついでに少し説明をさせて頂く。

 

ご存知の方も多いと思うが、スマートニュースというアプリがある。

お笑いコンビの千鳥さんがCMに出演しているアレである。

 

先週までこのアプリの名前位は知っていたが、昨今流行のLINE等のアプリでさえ『よく分からなくて怖い』という、おばあちゃんみたいな理由で一切使用せず、取引先各社の担当者を軒並み困らせる程深刻なメカ音痴の私は、どういうアプリかは全然知らなかった。

 

当サイトの読者におばあちゃんはあまりいないと思うが、念の為ウィキペディアを引用すると、スマートニュースとは下記の様なアプリである。

 

『スマートニュースは、全国紙をはじめとするニュースメディアと連携し、インターネット上で話題になったニュースを配信、アプリ上で読めるようになっているスマートフォン向けのアプリケーション。アプリは世界各国で配信されており、特に日本とアメリカでは合わせて1000万ダウンロードを記録し、月間400万人の利用者がいるとされる』

 

要は、読売や産経などの全国紙や地方新聞、更にはスポーツ紙や週刊誌、果ては雑誌や個人のブログや外国の新聞まで、ありとあらゆるメディア媒体の情報が、このアプリをインストールすると無料で読み放題というものである。

略して『スマニュー』というらしい。

 

なんだこれ。

 

とんでもなく便利やないか。

 

メディア界の大谷翔平みたいなヤツである。

 

こんなものがあれば、そりゃあ新聞も雑誌も売れなくなるはずである。

 

 

 

で、どういう経緯かサッパリ分らんが、この化け物みたいなアプリに当サイトの先週の記事が掲載された。

 

『朝日新聞』とか『時事通信』とか、ブッチギリの有名メディア記事群の片隅に、ちんまりと『ここで会ったが木曜日』の記事があり、そこから結構な人がアクセスしてくれた。

 

なんだかプロ野球のオールスター戦のベンチに、少年野球の子供が座ってはしゃいでいる様である。

 

今年の二月四週目からその名の通り毎週木曜日に更新してきた当サイト。

 

苦節三カ月。

記事数にして十五本目。

 

何となく何かに認められた様で感無量である。

 

 

 

とまぁ、お祭り騒ぎで散々調子に乗りまくっているが、本題はここからである。

 

そういった場所に記事を掲載して頂いてもちろんとても嬉しいのだが、なぜ十五本ある記事の中から先週の記事だけが掲載されたのか。

 

ここまで浮かれておいて何だが、正直な事を言うと先週の記事は結構さらっと書いた。

 

正しく言うと、手を抜いたとも言う。

 

その前の記事、五月の四週目から二週に渡って書いた『再見の話』前後編という記事がある。

 

内容は、私と中国人留学生との交流を描いたものなのだが、それには二十時間位を掛け、神経が擦り切れるくらい真剣に執筆したので、書き終えた瞬間燃え尽きた。

 

自分で言うのも何だが、大変出来の良い記事であると思う。

いつもながら誰も褒めてくれないので自分で褒める。

 

で、書き終わった脱力感から『暫くは何にも書きたくねぇ』とまるで売れっ子ライターの様な生意気な事を思った。

 

書きたくないも何も、別に誰かから頼まれて書いている訳でも無いので、サボりゃあいい話である。

 

しかし、私は顔の割に律儀なところがあるので、自分で決めた『毎週木曜日更新する』ルールを守る為、タイムリミット間際になって自分がイライラした時のストレス対処法でも書いてしまえ、と四十分位で記事にした。

 

その結果がこんな事になった。

 

 

 

『再見の話』が掲載されずに『非日常のススメの話』が掲載された理由。

 

スマニューの中の人がどういう基準で選んでいるのかは知らんが、自分が書いた手間暇や思い入れ等を抜きにして冷静に考えると答えは簡単。

 

みんなが読みたいか。

 

要は需要の有る無しであると思う。

 

知らんおっさんの中国人留学生との想い出話などは、だぁーれも興味無いが、イライラした時のストレス発散法は、誰もが多少なりとも興味が有るとスマニューの中の人は判断したのだろう。

 

悲しい。

 

二十時間余り、泣いたり笑ったりしながら書いた原稿より、四十分でさらっと書いた原稿の方が誰かの役に立つのである。

 

愛する夫の為に、美味しくなぁれと愛情を込めて半日かけて作った餃子と冷凍の餃子を一緒に焼いて、何も言わず食べさせたら冷凍の方が断然美味いと即答された若妻くらい悲しい。

 

だが、こういう悲劇は日常に溢れている。

 

 

 

私の本業は、百貨店などの小売店で色々なメーカーさんの商品を販売することである。

 

販売する商品のジャンルに特段括りはないので、依頼があればウインナーだろうがテレビだろうが、もっと言うとタイヤでも人形でも売れと言われればなんだって売る。

 

一旦仕事を引き受けると自分が作った、あるいは自分の会社で作った商品という感覚で愛情を持ってその商品を販売する。

 

もちろんこちらもプロである以上、その商品の長所と短所をお客様に説明して販売するのだが、中には一生懸命探しても長所が解らないと言おうか、長所が長所になってない商品がある。

 

 

 

典型的なのが家庭用掃除機である。

 

掃除機はうるさい。

 

そこで、とある日本の家電メーカーが持ち得る技術を結集し、従来よりも静かな掃除機を開発した。

 

分かりやすい数字にすると10くらいだった騒音が8くらいになった。

 

今まで掃除機がうるさいな〜、と思っていた人達の需要を見事に取り込み、その商品は結構売れた。

 

そうなると他のメーカーが黙っていない。

今度は違うメーカーが、騒音7の掃除機を出した。

 

すると、今度はそのメーカーの掃除機が売れ始めた。

 

 

 

ここまでは良い。

 

しかし、実はこの掃除機、騒音が7だから8のメーカーの掃除機より売れたのではない。

 

そりゃあ少しは騒音面の優位性もあったかも知れないが、ほとんどのお客様が価格や使い勝手を重視して7の掃除機を購入していった。

 

一般人には7も8も対して違いは分からんのである。

 

だが、何を思ったか各メーカーはそれを機に各社の技術を総動員して、いかに騒音を少なくするかの熾烈な競争に入っていった。

 

そして、新商品が出る度に7が6.9になり、更には6.8と徐々に音が小さくなっていき、5にまで来た辺りで音を小さくする事が限界に達した時、小音モードという新機能が搭載された。

 

このモードに切り替えると、吸引力はとても小さくなるが、音がほとんどしないという機能である。

 

全く意味が分からない。

 

掃除機の役割はゴミを吸引する事なのに、その能力を犠牲にして音を小さくする。

 

世の主婦や主夫の人達は、別にこっそり隠れて掃除をしている訳ではないので、そんな機能全く不要なのである。

 

で、その様な不毛な争いをしている間に、『吸引力の変わらないただ一つ』のヤツに国内シェアは荒らされ、ロボット掃除機の開発に周回遅れで出遅れる事になり、挙句の果てに海外シェアは、騒音8くらいだが値段が安い、中・韓勢に根こそぎ奪われた。

 

因みに、律儀に洗濯機でもほとんど同じ事が起きた。

 

 

 

良いものが売れない理由。

 

というか、真剣に物を作っていて『悪いもの』というのは存在しない。

 

わざわざ悪いもの作ってやろうと思って作る人はいないので、少なくとも作った本人からすればとても『良いもの』のはずである。

 

脱サラしたオヤジが突然開くカフェのテーブルがやたらと奥行きが広いのも、もちろんお客さんにゆっくりしてもらえる『良いもの』と考えて設置しているはずであり、まさかその過分な奥行きのせいで会話がし辛くなって、逆に居心地が悪い『悪いもの』となっているなど夢にも思ってないはずである。

 

全くアクセス数の伸びぬ『再見の話』だってそうだし、冷凍に負ける愛情たっぷり餃子だってそうである。

 

売りたければ必要なものを作る。

楽しみたければ良いものを作る。

 

そもそも土俵が違うのである。

 

『良いものが売れるなら、世界一美味いラーメンはカップラーメン』と、甲本ヒロトは言った。

 

流石天才ロッカーは上手いこと言う。

 

 

 

あなたにとって良いもの。

 

それは私にとって、全然いらないものかも知れない。

 

その逆も然りである。

 

と、言うことで。

 

これよりケーキが焼ける炊飯器の長所を全力で考えたいと思う。

 



そんな、マーケティングの話。

 

 

 

 

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