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森猛 伊亮

森猛 伊亮
中学校卒業後、不動産屋や大工、果ては証券屋やボーイなど様々な経験をつみながら、デンジャラスかつクレイジーな生活を経て、2013年より独立。

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0点の話

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過日、美しき子持ち女性と良い仲である友人と食事に行った時、中々ショッキングな事実が発覚した。
 
 
 
どうやら私は算数が出来ない。
 
 
 
決して、数学ではない。
算数である。
 
結構ビビった。
 
何がビビったって、私は現在三十四歳のちょっとしたおじさんである。
 
まさか、自分が算数の出来ないおじさんになるとは夢にも思わなんだ。
 
 
 
 
事の発端は、友人が鞄からおもむろに取り出した算数ドリルから始まった。
 
この友人は来春結婚する予定なのだが、結婚をして夫となると同時に、小学三年生と五年生である二人の子供の父とも成る中々の果報者でもある。
 
彼は、花の中卒である私とは全然違い賢い大学を卒業して、いわゆる一流企業に勤めるナイスガイなのだが、子となる二人に勉強を教えてやる為に小学生の算数を復習する〝大人算数ドリル〟なるものを購入し持ち歩いていた。
 
真面目で優しい男である。
 
で、その算数ドリルには小学校高学年向けの問題がたくさん掲載されており、案外おもしろい問題もあるからお前もやってみろと彼は言った。
 
この時点で、少し酒も回り大変バカである私は一瞬怯んだのだが、良く考えてみると小学生の問題である。
 
 
六年生でも十二歳、子供も子供。
 
 
三十四歳から見れば産まれたてと言っても過言ではない。
 
そんな子供が解ける問題を解けぬはずがなかろう。
 
などと思い、私はこの算数ドリルに挑戦してみた。
 
 
結果は、当然全問正解であった。
 
 
あったり前である。
こっちはお前達の三倍くらい生きているのである。
 
大人をなめるんじゃない。
と、ドヤ顔でタバコをふかしていたら友人から待ったがかかった。
 
 
『お前この問題どうやって解いた?』と彼は言った。
 
 
その問題は、図形の内の一つの角の角度を求めるものである。
 
複数の図形が重なり、所々にヒントとなる他の図形の角度が記載されているタイプのアレである。
 
なぜ彼がこんな事を聞いたのかはこの時点では良く分からんかったが、私は算出方法を彼に伝えた。
 
 
 
『ここの角度は90度よりは全然尖ってるけど、45度よりはなんか緩いやん?
 
ということは、50度か60度やん。
 
で、ここは90度って書いてあるから、足したら140か150やん?
 
三角形の内角の合計は180やろ?
それは知ってんねん。
 
で、残ったここが30か40かでいったら40やろ。
30度はもっと尖ってるもん。
 
だから50度。答えは50度。
 
小学生に出す問題で52度とか半端な数字は無いやろ。最悪2度位やったら後で削るし。』
 
 
 
正解は50度である。
 
答えは合っており、私は得意顔である。
 
しかし、友人は唖然とした。
どうやら私の解き方はおかしいらしい。
 
このタイプの問題は、色々書いてあるヒントの数字を組み合わせて式を作り、その式を計算した上で答えを導き出すそうだ。
 
 
 
初耳である。
 
 
 
そんな事はした事がない。
 
その後も彼は色々な問題の解き方を聞いてきたが、そんな事を聞かれても、こっちは何となくフィーリングで解いているのである。
 
なんでそうなるんとか言われても、そうなるからそうなるとしか言いようが無い。
 
自慢じゃないが、いや、やっぱり自慢であるが、私は中学二年の途中から〝遊ぶのが楽し過ぎる〟という至極シンプルな理由によりあまり学校に行かなくなったのだが、小学生の時からその時まで、英語と漢文は20点以上取った事は無いが、それ以外の教科では70点以下を取った事も無い。
 
授業中はほとんどお昼寝の時間であったが、テストの点は全然悪くなく、むしろ英語と漢文の無い小学生時代はクラスでトップか二番目の成績であった。
 
 
しかし、正しい式は作れない。
 
 
友人が言うには、現在の小学校では答えが合ってても正しい式が書けないと、テストでは0点であるらしい。
 
ということは、私の解答は不正解。
私は算数が出来ないのである。
 
算数0点おじさんなのである。
 
これはビビった。
 
 
 
 
なぜこの様な事態に陥ったのか。
 
その原因をよく考えてみると、どうやらそれは私の少年期の勉強方法に問題があった。
 
私は少年期に〝テスト勉強〟というものを全くしていなかった。
 
ここで言う〝テスト勉強〟とは、テスト直前のテスト対策の事ではなく、テストに至るまでの授業や宿題全ての勉強の事である。
 
 
私は授業中ほとんどお昼寝をしていた。
 
そして、宿題は毎日『忘れましたー』と言っていた。
 
 
テメェで書いててビックリしたが、中々クレイジーな小学生であった。
 
なぜこの様なクレイジーな行動をとっていたかというと、それはもちろん〝只単に勉強が面倒くさい〟という理由も多分にあったのだが、それ以上にテストの前に解き方を勉強するとツマンないと感じていたからである。
 
要は、〝クイズ番組を観る前に答えを知ってたらツマンない〟というのと同じノリで、学校教育を受けていた。
 
そして、テストを受けた後に間違えた箇所や解らなかった箇所だけを点検し、なぜ間違えたのか、なぜ解らなかったのかを検証していた。
 
 
中々のアホである。
 
 
私は、学習というものをクイズ番組と同格に見ていたのである。
 
そしてこの順序を間違えたよく分からん勉強法をとると、正しい式が作れない事になってゆく。
 
私はアホな分、勘だけはアホほど鋭いのでテストの点数はすこぶる良かった。
 
 
が、これが落とし穴であった。
 
 
テストで正解するという事は、その部分は改めて検証する事はない。
 
という事は、勘とフィーリングで解けた問題は、正しい解き方を知らないまんまに放置するという事になる。
 
この状況は、第三者として客観的に見ると大変デンジャラスな状況である。
 
テストの点数だけは良いので、周りの人間はもちろん、私自身も〝自分が問題の正しい解き方を知らない〟なんて事に気付かない。
 
そして、こういう事を繰り返し行い続けた結果、恐ろしい事に算数が出来ない三十四歳のおじさんが出来上がったのである。
 
ほとんどホラーである。
めちゃくちゃ怖い。
 
 
 
 
しかも、このホラーにはもっと恐ろしい続きがある。
 
三つ子の魂百までというかなんというか、私は仕事をし始めてからも、少年期に学校で受けたテストと同じノリで仕事をする事になる。
 
正しい仕事のやり方を学ぼうとせずに勘とフィーリングだけで仕事をやり続ける。
 
しかも、テストと同じで、営業成績なんかはすこぶる良いので、ある時期までは自分が〝正しいやり方を知らない〟という事に気づかずに爆進していた。
 
その結果、ある時テストが0点になる事なんぞどころではないトンデモなくどエライ目に合うのだが、書き始めると長くなるのでまたの機会に。
 
 
 
そんな、出来ていると思っていても実は全然出来ていない事もある話。