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森猛 伊亮

森猛 伊亮
中学校卒業後、不動産屋や大工、果ては証券屋やボーイなど様々な経験をつみながら、デンジャラスかつクレイジーな生活を経て、2013年より独立。

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非日常のススメの話

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ホテルの机の上にくまモンがいるので、おそらくここは熊本だろう。
 
確か私は4日前まで北海道で仕事をしていたはずである。
 
その後、3日間栃木で仕事をした後自宅のある広島に戻り、翌朝にはくまモンの元へ向かった。
 
本日より5日間熊本で仕事の後、愛媛へ向かう予定である。
 
私は大変節操が無いので、お金になる、ならないに関わらず、片っ端から仕事を引き受ける。
 
その結果手元のスケジュール帳によると、少なくとも東京オリンピックが終わっても私の旅芸人の様な生活は続くらしい。
 

突然死んでしまったら、取引先の皆さんはどうするのかといつも思う。
 

が、良く考えると死んでいるのは前頭部の毛根くらいのもので、それ以外は心身共に充実しており、至って快調であるため、当分の間は皆さんを困らせる事は無いと思う。
 
というか、そもそも一個人が一人抜けたところで会社というものは次の日からも普段と変わらずグルグル廻るもので、全くの杞憂である。
 
 
 
しかし、何故こんなにも快調なものか。
 
この様な旅芸人的生活を行なっていると、もちろん常に外食となり、まさか家内が同伴して食生活を監視する訳もないので、好きな物を好きなだけ食う。
 
ホテルは出来るだけ仕事現場に近い場所に取るため、世の運動不足サラリーマン最後の砦『通勤中に歩く』ということもしないので慢性的な運動不足でもあるし、更に言うと一日最低一箱の喫煙をする。
 

好きな物を好きなだけ食い、運動もせずに喫煙をする。
 

もし『TBS名医の太鼓判』に出演すれば多分医師団から思いっきり怒られる生活をしていると思う。
 
しかしながら、年に二度の健康診断をしてくれる主治医曰く、血糖値から血圧、その他諸々の数値は全てパーフェクトで、心臓から腸まで全ての臓器がアスリート並みに力強く働いているらしい。
 
そういえばこの五年、いぼ痔になったり、親知らずが生えてきたりと、痛い思いは何度かしたが、風邪一つひかない健康優良おじさんである。
 
 
 
などと考えていると、天下のNHKスペシャルでどえらい番組を放送していた。
 
『キラーストレス』と銘打たれた、タイトルだけでも胃が痛くなりそうなこの番組。
 
読んで字の如くストレスというのは大変怖いもので、ストレスが原因となりホルモンが暴走を起こして細胞や血管を破壊し、時には死に至るというもので、ストレスは癌などの大病とも密接な関係があるという内容であった。
 
こういう特集は、何かというと最悪の場合死に至る。
 
まぁ平く言うと、ストレスは万病の元だから上手にストレスを減らしてやると病気にかかりにくくなりますよ〜という事であった。
 
なるほど。

私は風邪もひかぬはずである。
 
 
 
ストレスとは日常の積み重ねであると思う。
 
毎日同じ事を繰り返し、知らぬうちに色々な事が底無し沼の様にストレスになっていく。
 
今日職場で上司から理不尽なノルマを上乗せされ、ストレス全開で当サイトに来たあなたも、入社してすぐの頃は希望に燃えキラキラと輝いた目をして、ストレスなんぞ感じる事は無かったはずである。
 
会社に入社直後はやる事全てが初めての事であり、ほとんど何にも出来ないので、本当は過分なストレスがかかっているはずなのだが、出来ない事が出来る様になる喜びや、新しい事を知っていくという刺激で案外ストレスは感じない。
 
私はこの現象を新人ーズハイと呼んでいる。
マラソン選手のランナーズハイみたいなものである。
 
そういう喜びを見つけられない人は、過分なストレスにより見事五月病が発症する事になっている。
 
しかし、五月病の魔の手から新人ーズハイで逃げ切った先にとんでもない化け物がいる。
 

日常の積み重ねというやつである。
 

二年、三年と仕事をこなしていくと、人から教わる事なく自分一人で出来る仕事が増えていく。
 
明らかに新人時代よりも新しく覚える事が減り、今まで覚えてきた事を応用する時期に差し掛かるので新たな刺激が急激に減っていく。
 
更に、他人から見たらどうかは兎も角として、自分では仕事が出来ているつもりなので『口だけで働かない上司』や『言う事を聞かない後輩』『調子の良い同僚』などを見てイラッとストレスを感じる事になる。
 
毎日毎日同じ顔触れで、同じ事が繰り返されるうちに『イラッ』が『イライラ』になり、『イライラっ!』となり『ドォォーン!』となる。
 

何も職場だけの話ではなく、主婦や主夫の皆さまだって同じである。
 

新婚当初は新しい環境、心境で愛する人の為に家事を行い、愛する人もそれに答えて『ありがとう。愛してる』なんぞとかましてくれる。
 
が、段々と小慣れてきた頃には愛する人も馴れ合いになり、かますのは感謝でも愛の言葉でも無く、屁ばかりとなるので、靴下が裏向きに脱がれた瞬間に『ドォォーン!』となるのである。
 
 
 

という事は。
 
毎日の様に違う人と会い、週に何度か職場が変わり、それどころか週に何度か住居まで変わる旅芸人スタイルの私にはストレスなどかかりようが無いので、風邪すらひかぬパーフェクト健康診断と相成るのだと思う。
 
とはいえ当サイトの読者の皆さんは、私の様に旅芸人スタイルで仕事や家庭を維持することが出来る環境に無い方が大半だと思うので、今週は皆さんが『ドォォーン!』となってしまわない様に、私が旅芸人生活を始める前、サラリーマン時代にやっていた『ドォォーン!』回避法を勝手に伝授したいと思う。
 
これは効く。
 
 
 
テーマは『日常からの非日常』である。
 
まず、休みの日に日常を用意する。
 
いつも起きる時間に起き、朝のルーティーンをこなし、いつもの服を着る。
 
普段スーツで仕事をする人はスーツを着て、作業服の人は作業服を着て、仕事の時間と同じ時間に家を出る。
 

そして、ここから思いっきり普段と違う事をする。
 

電車通勤の人は、普段会社へ行く方向と逆の電車に乗り終点まで行く。
 
尚、大阪環状線、又は東京山手線、或いは鉄道各線の終点にお住まいの方々は面倒だが電車を乗り換えるか会社を通り過ぎて終点まで行く。
 
車やバイク、自転車通勤の方々は会社と真反対に好きなだけ突っ走る。
 
実はこの時点で、普段は見ない新鮮な風景を見る事により結構な気分転換になるので、気の晴れた方は家に帰って寝ても良いと思う。
 
非日常とは、これ位ちょっとしたものでもかなりの効果がある。
 
 

 
しかし、こんな事ではイライラが収まらない『嫌いな課長により理不尽ノルマが課せられた』などの強烈なストレス日は間違いなくある。
 
そんな時は到着した地で普段絶対にやらない事を全力でする。
 

必ず全力でする事。
 

半端はいけない。
 
 
 
私が過去にやった具体例を二つ挙げる。
 
私は人生そのものが博打みたいなものなので、一切の賭け事というものをほとんどやらない。
 
なので、銀行で大枚二十万円をおろして地方競馬場に赴き、全部馬券にブチ込んだ。
 
スーツを着てビジネスバックを持つ日常に、朝からルールもよく分からん競馬をしながら酒を飲む。
 

かなりの非日常であった。
 

二十万は綺麗サッパリ無くなったが、命の洗濯代と思えば安いものである。
 
因みに給料日まで五日を残したこの日の預金残高は、この二十万を除いて三千円しか無かった。
 

非日常というかクレイジーである。
 

この時はかなりスッキリしたが、別にお金をかけなくたって全然構わない。
 


私は超がつくほどのインドア派なので、キャンプやバーベキューなどのイベントはどんなに仲の良い人からの誘いでも全力で断る。
 
なので、夏の日のある日、スーツ姿で和歌山の白浜ビーチまで行き、現地で水着を調達して、二時間程全力で泳いだ。
 
五年ぶりぐらいの水泳であったが、かなりジャブジャブ命の洗濯が出来た。
 

周りから見ると多分溺れている様に見えたであろうが。
 

こちらは出費が水着代と交通費位なので皆さんにオススメである。
 
が、間違っても水着を持って行ってはならない。
 
それでは、只の海水浴になってしまう。
 
あくまでも、日常からの非日常が効果的であるのでご注意を。
 
 
 
人間は飽きる生き物である。
 
物凄ぇ飽きる。
 
皆んなが飽きずに同じ事をコツコツ積み重ねられるのであれば、皆んながイチローや松井になっているはずである。
 
しかし現実には、日常にあるストレスの重みで折れかかった心を、なんとか折れない様にツギハギをしながら懸命に生きている。
 
ならばいっそのこと、たまには非日常というハンマーでポッキリ折ってしまえば良いと思う。
 
折れた骨がくっついた時強く太くなる様に、折れかかった心も一度折ってしまえば案外軽くなる。
 
ストレスに押し潰されそうなそこあなた。
 
次の休みにはぜひ非日常な一日を。